死にかけたチー牛




「チー牛」という若者言葉が流行しています。

解説しますと
チーズ牛丼(=略して、チー牛)という地味なメニューを注文していそうな、暗く目立たない、イケていない男性
という、揶揄や皮肉を込めたレッテルの貼り付けです。

この言葉は、筆者に見事なほど当てはまります!
その実、チー牛しか食べていませんもの。

編集注:常識をもって判断してください。こんな食生活では倒れます。]

しかし、「独身(同時に、毒心でもある)であるのは、チー牛を食べているからではないか?」と考えるようになりました。
そこで「何かオシャレな食べ物を食べよう。そうすれば即座にモテる!」と考え、パスタ屋に行きました。


「いらっしゃいま...」
女性店員の表情が曇ります。

「何とも場違いな店に来たかも...
しかし、モテるためには勇気を出さないと!」
と内心思っていると、店員より
「あのう、牛丼屋はこの先50mにありますが...」
と言われる有り様。

「いいえ、パスタを食べに来ました。」
と私が言い返すと、店員が青ざめる。
「は、はい。奥の席をどうぞ。」
そう言うと、脱兎のごとく走り去って行きました。

メニューを開くのですが、書いてある内容が理解できません。
「カ、カ、カッペリーニ?」
「リ、リ、リングイネ?」
「フィ、フィ、フィットチーネ?」
さっぱりわかりません。

適当に注文用のタブレットを叩きます。
「こ、これで大丈夫...きっと...」
と思っていたのですが

「お待たせしました。お子様クリームソーダです。」
注文に失敗したようだ。

「ええい、大人にでも飲食できるはずだ。」
と、かわいい猫のキャラクターの描かれたグラスに入ったソーダを飲みます。

「お待たせしました。お子様ミートソース25人前です。」
次々に並べられる皿を前に、絶望する。

「食べられるだけ食べよう。」
そう考え、一口食べたところ...
「うぅっっ!!!」
私は倒れて、意識を失いました。


目覚めると病院のベットです。
医師がおり
「目覚めましたな、チー牛さん。」
と呼びかけられました。
「あのね、あなたみたいな人がチー牛以外を食べようとすると、命にかかわるんですよ。」
と、たしなめられてしまいました。

「それでは、血液検査をして問題なければ退院できますからね。それと、処方箋を出しておきます。」
と言われ、私は
「処方箋?」
と聞き返すと
「チー牛の処方箋です。最大で1週間分が保険適用で食べられるようになるから。」
と言われたのでありました。