レビュー:斎藤環『社会的ひきこもり』


精神科医・斎藤環氏

ひきこもり業界に所属する人にとって、斎藤環氏を知らない人はいないことでしょう。

ひきこもりに詳しい精神科医で、この分野の草分け的な存在です。

その斎藤氏が1998年に出版した(斎藤氏は当時37歳。)
『社会的ひきこもり 終わらない思春期』PHP新書
を読みました。


本書は二部構成になっています。

最初の第一部では、ひきこもりとは何であるかという医学的解説をしています。
マスコミなどで見られる、偏見を排除して医学的な裏付け、定義づけをするために書かれたようです。

次の第二部では、ひきこもりの社会復帰をどのようにアプローチしていくのか。臨床経験に基づく見解が書かれています。

斎藤氏の執筆同時の年齢から想像できると思いますが、若手医師としての経験をまとめ上げた書籍です。


第一部は、はっきり言って読みにくいです。
ひきこもりへの誤解や偏見を説くために、専門的なアプローチをしようとしているためか、とっつきにくい感じがします。

ご自身がひきこもりであったり、既に通院等をされている方は、第一部を飛ばしても良いかもしれません。


第二部は、回復のアプローチ方法を述べています。
とても実践的なことが書かれていますが、なかなか難しいようにも見えます。

斎藤氏は、以下のようなことを書いています。

「相手のすべてを受容しようとする人は、相手を所有したがっているのでなければ、みずからの万能に酔っているだけです。」

「病者は労働を免除され、治療を受ける権利がある。また病者の義務とは、治ろうとする意志を持ち治療者に協力することである。 社会学者タルコット・パーソンズ。」


本書の全体としまして、どちらかというと、支援者に向いている内容に思えます。